鼓膜穿孔ってどんな病気?

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監修:金丸眞一先生
公益財団法人田附興風会医学研究所北野病院
医療法人社団淀さんせん会金井病院
鼓膜穿孔ってどんな病気?

「鼓膜に孔(穴)」鼓膜穿孔とは

鼓膜穿孔(こまくせんこう)とは、何らかの原因で鼓膜が破れ、塞がらずに残った孔(こう:穴)を指します。

音は、外耳(がいじ)、中耳(ちゅうじ)、内耳(ないじ)、蝸牛(かぎゅう)神経、大脳が情報を伝達することで聞こえます。(音が聞こえるしくみ)、(音(空気の振動)をキャッチ!鼓膜の働き

鼓膜に孔(穴)が開いていると情報の伝達が上手く行かず、その結果、音が聞こえにくい「難聴」という状態になります。

また、鼓膜に孔(穴)が開いていることで、外から細菌やウイルスが入りやすくなり、中耳炎の原因になって、耳漏(じろう:耳だれ)などを引き起こしたりすることもあります。

鼓膜穿孔の原因

鼓膜穿孔(こまくせんこう)のおもな原因として以下が挙げられます。

  • 慢性中耳炎
  • 外傷
  • 滲出性(しんしゅつせい)中耳炎などの治療の後遺症

慢性中耳炎による鼓膜穿孔

急性中耳炎が長引いたり再発を繰り返したりして、鼓膜に孔(こう:穴)が開いた状態の中耳炎です。耳鳴りや耳漏(耳だれ)などがあり、症状が悪化するとめまいが起こることもあります。孔(穴)が開いた状態が続くと、難聴が悪化するおそれがあります。


外傷性鼓膜穿孔

鼓膜に異物が当たること(耳かきや綿棒で鼓膜を突くなど)や急激な気圧変化(平手打ちされた場合、飛行機の離着陸やダイビングなど)で鼓膜が破れてしまった状態です。突然痛みが生じ、時には出血や難聴、耳鳴り、めまいが起こることがあります。


滲出性中耳炎などの治療の後遺症による鼓膜穿孔

中耳が炎症を起こし、粘膜から出る粘液(滲出液:しんしゅつえき)が中耳にたまった状態が、滲出性中耳炎です。音は聞こえづらいですが、耳の痛みや発熱はありません。この治療で中耳にたまった粘液(滲出液)を抜き、その後も、粘液(滲出液)がたまらないようにするために鼓膜切開や鼓膜チューブ留置を行います。その結果、鼓膜が閉じずに孔(穴)が残ることがあります。


鼓膜穿孔のいろいろな治療方法

鼓膜は再生能力が高く、小さな鼓膜穿孔(こまくせんこう)であれば自然に閉鎖することがありますが、鼓膜の穿孔期間、穿孔状態などから自然閉鎖が見込まれない場合に、鼓膜の穿孔を閉鎖する手術が行われます。

鼓膜穿孔の原因、穿孔の大きさなどから、いろいろな手術が行われますが、ここでは代表的な治療法を紹介します。

耳の診察

鼓膜穿孔閉鎖術

耳掻き・綿棒などによる外傷や、耳を平手打ちされた場合、飛行機の離着陸やダイビングなどの外耳道(がいじどう)の気圧の変化によって生じる鼓膜穿孔には、鼓膜穿孔閉鎖術(こまくせんこうへいさじゅつ)が選択される場合が多いと言われています。

この治療法では、人工膜(人工的に作ったコラーゲンなどの膜)などでその穿孔部位を覆い、再生を促します。


鼓膜形成手術

中耳(ちゅうじ)に病変が無く、穿孔を紙や綿などで一時的に閉鎖したとき十分な聴力改善が認められる場合に、鼓膜形成手術(こまくけいせいしゅじゅつ)が行われます。

この治療法では、耳介の後ろの皮膚を切って採取した自己組織が、鼓膜の穿孔部を覆う材料となります。

手術は、方法によって日帰り手術ができる場合もありますが、通常は数日の入院が必要です。


鼓室形成手術

中耳に病変があったり、鼓膜形成手術では対応できない場合に行う手術で、病状に応じて、内部の病巣の処置を行ったり、中耳の形態を整えたりします。鼓膜を形成する際は、耳介の後ろを大きく切開し、通常は側頭筋の筋膜(こめかみの上にある筋肉を覆っている膜)を採取して移植します。

手術は全身麻酔によって行われることが多く、症例によって手術時間はまちまちですが、2〜3時間程度かかります。また、通常1週間程の入院が必要となります。


鼓膜再生治療

鼓膜の組織を再生して穿孔部を閉鎖させ、本来の鼓膜の状態に戻す治療法です。例えば、すりむいた傷口に皮膚が伸びてきて元の自然な皮膚に戻るような体の再生能力を利用します。鼓膜は再生しやすい組織ですが、耳漏が出ているなど再生環境が悪い場合は再生が進まず孔(穴)が残ります。仮に再生環境が良くなっても、鼓膜を再生させる元になる細胞が休止状態になっていますので、自然に孔(穴)がふさがることはありません。そこで、鼓膜の孔(穴)の周りを傷つけてやると、再生の元になる細胞が活動を再開し、活発に増殖を開始します。この新しく増殖してきた細胞がしっかりと伸びて鼓膜をつくれるよう、細胞の足場に細胞の増殖を促す薬剤を染み込ませたゼラチンスポンジ(スポンジ状に成型したゼラチン)を用いて穿孔部位をふさぎ、医療用の糊で表面をカバーします。ちょうどビニールハウスで野菜や果物を作るのと似ています。

鼓膜再生治療(こまくさいせいちりょう)は入院の必要がなく、外来の診察室で手術することもできます。ただし、すべての鼓膜穿孔にこの治療が適用できるわけではありません。中耳炎や中耳に病変があったり、難聴の原因が他にもある場合は、必ずしもこの治療ができるわけではありません。


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患者さんの状態によって適切な治療が異なりますので、治療法については医師にご相談ください。