難聴とは音が聞こえにくい状態のことをいいます。難聴になると、日常生活に様々な不都合が生じます。
「一般社団法人 日本耳鼻咽喉科学会ホームページ
http://www.jibika.or.jp/owned/hwel/」から引用
特に認知症に関しては、2015年の厚生労働省「認知症施策推進総合戦略(新オレンジプラン)」で、「加齢」や「高血圧」と並んで「難聴」が認知症の危険因子であると報告されたことで注目が高まりました。
音の情報が適切に得られないことで、周囲とのコミュニケーションや社会との関わりが減り、次第に精神状態や認知機能にも影響が出るものと考えられています。
音は、外耳(がいじ)、中耳(ちゅうじ)、内耳(ないじ)、蝸牛(かぎゅう)神経、大脳の連携によって聞こえます。(音が聞こえるしくみ)
したがって、これらの経路のどこかに問題があると、難聴になります。
難聴の治療を行う際は、検査を行い、原因をつきとめた上で対処することが重要です。
難聴は、異常のある部位の違いによって以下の3種類に分けられます。
伝音難聴は、外耳や中耳の異常により音が内耳にうまく伝わらない状態です。外耳道炎や中耳炎、鼓膜穿孔(こまくせんこう)、耳硬化症(じこうかしょう)、外傷など様々な原因で起こります。薬物治療や手術により改善する場合が多いとされています。また、補聴器の使用も有効です。
感音難聴は、内耳や蝸牛神経、脳の異常によって音を感じにくくなった状態です。突発性難聴や騒音性難聴、加齢性難聴、先天性難聴などが該当します。薬物治療や補聴器の使用が主な治療となりますが、人工内耳手術が有効なこともあります。
混合性難聴は、伝音難聴と感音難聴の両方が組み合わされたものです。症状に合わせて治療や補聴器の使用を検討します。
鼓膜穿孔(こまくせんこう)とは、何らかの原因で鼓膜が破れ、塞がらずに残った孔(こう:穴)を指します。(鼓膜穿孔の原因)
鼓膜は外耳(がいじ)から集められた空気の振動を鼓膜の膜の振動に変え、耳小骨を介して内耳(ないじ)に振動を伝える役割を果たしています。(音(空気の振動)をキャッチ!鼓膜の働き)
そのため、鼓膜に孔(穴)や裂け目ができていると、空気の振動を十分集めることができず、内耳に振動を伝える力が弱くなったり、鼓膜の破れた部分から直接入ってきた空気の振動が内耳の働きを邪魔して、脳へ伝える電気信号が弱まったりします。
鼓膜穿孔による難聴は、「伝音(でんおん)難聴」(難聴の種類)に分類されます。鼓膜に孔(穴)が開いたままでは補聴器を用いて音を大きくしても、鼓膜の孔(穴)から内耳に直接入った音と残った鼓膜を通じて内耳に入った音が蝸牛内部でぶつかり合い、エネルギーが減少することになるため、補聴器の効果が十分発揮できません。したがって、鼓膜の孔(穴)を閉鎖することが重要になります。
鼓膜穿孔による難聴では、原因となる病気により、耳鳴りや耳漏(じろう:耳だれ)といった症状が見られることもあります。